新聞社よ、就職氷河期の轍を踏むな〜次世代に負担を押し付ける「逃げ切り」に未来はない

「紙からデジタルヘ」という時代の流れを受け、経営が悪化する新聞業界。徳島新聞は編集部門の分社化と新入社員の賃金抑制という打開策を打ち出しましたが、労働組合の猛反発を招いています。新聞社を始めとするメディア企業の経営はどうあるべきなのか、他の業界と比較しながら考えます。
あしたメディア研究会 2024.03.20
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新聞業界が大きな変革期を迎えています。インターネットの普及により、紙の新聞の発行部数は年々減少の一途をたどり、新聞社の経営基盤は揺らいでいます。このような中、徳島新聞は、編集部門を分社化し、新入社員の給与を25%削減する方針を打ち出しました。これに対し、労働組合は「次世代搾取は許されない」と猛反発しています。果たして、新聞社に未来はあるのか。ネットメディアの編集者で、経営企画部門の経験を持つアールと、元新聞記者で現在はネットメディア編集者のマツが、メディア業界の構造的課題について語り合いました。

※2人の議論の内容をもとに、読みやすいように対談風に再構成しました。

新聞社の「世代間格差」が組織を蝕む 

アール:徳島新聞の話を聞いて真っ先に思い浮かんだのは、「就職氷河期」のことだ。本来、会社は業績悪化や先行きが不透明になったとき、既存の体質や問題点に着手し、必要なリストラをしなければならない。しかし、法律的な制約があるとはいえ、それをせずに新卒採用を抑制して「入口」だけを絞ることで人件費を減らそうとした。その対応が、会社の人員構成を歪め、氷河期世代という大きな社会問題を生んでしまった。

マツ:皮肉なことに、今の経営幹部の多くはバブルを経験している世代だ。バブル世代が会社を守ろうとするあまり、若手の採用を抑えているのかもしれない。本来なら、自分たちがリストラの対象になるべきなのに、次の世代に負担を押し付けているようにも見える。新聞社の中には、就職氷河期を経験した人も多くいるはずだが、当時の苦い経験を活かそうとする姿勢が感じられない。

アール:「全ての職場の仲間を同じ賃金体系にすべし」というのが、労働組合の長年の主張なのだそうだ。でも、それは現実的ではない。会社の業績や戦略に合わせて、事業部門や部署ごとに給与体系を変えるのは当然のことだ。一律同じにすべきだという考えは、組合の既得権益を守るためのレトリックに過ぎない。何も変えずに会社を維持成長させていくことができると思っているのだろうか?

「守るべきもの」と「捨てるべきもの」を仕分けよ

アール:日立製作所のような民間企業は、事業部ごとに分社化し、将来性のない事業は思い切って売却するなど、ドラスティックな事業構造改革に取り組んできた。親会社の傘下にあっても、事業部ごとに給与体系を変えるなどメリハリをつけている。既存事業は生産性を上げるために徹底的なDXを行い、場合によっては社外に売却し、新規事業の芽を見つけて育てていく。事業ポートフォリオを大胆に変革しないと、会社は生き残れない。

マツ:一方で、新聞社は既得権益にしがみついているように見える。紙の新聞の部数が落ちて販売収入と広告収入が激減しているのに、なぜ抜本的な改革に踏み切れないのか。社内の抵抗勢力が強いからだろうか。

アール:でも、このままでは10年後、20年後の新聞社の姿が想像できない。紙の新聞は15年後には消滅するとの予測もある。だから、新聞社は「次の一手」を真剣に考えなくてはいけない。何を残し、何を捨てるのか。守るべきものと、捨てるべきものを仕分けしなければ前に進めない。

マツ:実は新聞の最大の強みは、全国すみずみまで行き渡った宅配網の存在なんだよね。販売店のスタッフが低賃金で新聞を毎朝、確実に届けるシステムがある。また、戦前の新聞統廃合によって業界が寡占化し、新規参入しにくかったのも既存企業に有利だった。しかしデジタルの世界では、その強みが生かせない。そこが新聞社が苦境に陥っている根本的な要因といえるね。

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  • 固定観念を捨て、ゼロベースで考えるべき
  • 新聞の夕刊に関するアンケート
  • ローカルメディアの運営に関するオンラインセミナー

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