「政治報道は、選挙が始まった瞬間に面白くなくなる」テレ東の挑戦から考える「タブーなき選挙報道」

テレビ東京は2022年参院選で「選挙報道のタブー」に挑んだ(出典:YouTubeチャンネル「テレ東BIZ」)
「政治報道というのは、選挙が始まった瞬間に面白くなくなる」。こう鋭く指摘するのは、テレビ東京の豊島晋作キャスターです。4月末に東京で開かれた報道関係者向けの講演で発言しました。
豊島さんのチームは2022年の参院選にあわせて、これまでにない斬新な選挙報道にチャレンジしました。
選挙公示直前の6月15日から投票日前日の7月9日まで、YouTubeで「“タブーなき”一問一答」と題した解説動画を連日投稿。大きな注目を集めたのです。
最初に公開した「創価学会の自民党への影響力」に関する動画は40万回以上再生されています。
このほかにも「そもそも参議院って必要?」「日本共産党が政権を握ったら共産国になるの?」といったテレビでは扱いにくいテーマを取り上げて、テレビ東京官邸キャップの篠原裕明記者がわかりやすく解説しました。
日本では公職選挙法の規制などにより、これまで新聞やテレビなど大手メディアの「選挙報道」は極めて抑制的でした。公平中立な報道を意識するあまり、選挙期間に候補者に関する具体的な情報や論評がほとんど報じられないという問題が生じていました。
「民主主義の決定プロセスで、最も情報が必要なときに、画一的な報道しかされていない」
政治担当記者として総理官邸や与野党を取材した経験も持つ豊島さんは、そのように語ります。
選挙の投開票日の夜8時から、テレビで大々的に放送される「開票特番」。そこでは、テレビ局の記者たちが選挙期間中に取材した映像がふんだんに流れます。しかし有権者はそれを見ても、もう投票することはできません。
「投票が終わった後にお前ら何やってんだ」。視聴者からそう批判されると、豊島さんは話していました。
放送法4条の「政治的公平」の呪縛
こんな「つまらない選挙報道」の背景にあるのは、テレビ局に「政治的公平」を求める放送法4条です。
「放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない・・・二 政治的に公平であること」(放送法4条1項)
また、テレビ東京などが所属する日本民間放送連盟が定めた「放送基準」にはこうあります。
(11) 政治に関しては公正な立場を守り、一党一派に偏らないように注意する。
このような政治的公平を強く意識するあまり、選挙報道が慎重になってしまっている面があるといえます。

「報道実務家フォーラム」で講演するテレビ東京の豊島晋作キャスター(撮影・亀松太郎)
「投票後」の開票速報にどれだけ意味があるのか?
しかし、その代わりにとばかりに華々しく展開される「投票後」の開票速報にどれだけ意味があるのか。むしろ、積極的に報道すべきは「投票前」なのではないか。
そんな問題意識から、豊島さんたちは、YouTubeでの「“タブーなき”一問一答」シリーズに挑戦したそうです。
このシリーズでは、インターネットの特徴である双方向性も取り入れようと、Googleフォームで視聴者から質問を集め、それに答える形で解説動画を作成しました。
動画の中で、篠原官邸キャップは、意図をこう説明しています。
この記事は無料で続きを読めます
- 公示日以降に特定政党を扱うのは自粛した
- 新聞は「公選法148条」を意識しすぎ?
- 「選挙法上は無制限に近い自由」があるはずだが・・・
- 「選挙報道のあり方」を考えるオンラインイベント
すでに登録された方はこちら