従来型「テレビ視聴」50%割れの衝撃
こんにちは。あしたメディア研究会の亀松です。
酷暑の8月半ば、こんな記事が日本経済新聞に載りました。
アメリカの動画視聴に関するトピックですが、日本のメディア状況を考えるヒントがあると感じました。
「リニア」から「オンデマンド」へ
みなさんはテレビ、装置としてのテレビの前に座っているとき、いったいなにを見ているでしょうか?
テレビという装置はもともと、地上波のテレビ番組を見るデバイスだったのですが、いまはいろいろな用途があります。地上波の番組を見る人もいれば、YouTubeやNetflixといったインターネットの動画配信サービスを見ている人もいます。DVDを見る人もいれば、テレビでゲームをする人もいる。
そんな状況の中で、 地上波や衛星放送という従来型のテレビ番組を見ている時間はどれくらいなのか。逆に、インターネット動画の試聴時間はどうなっているのか。そういうデータを調べてみたら、大きな変化が起きていたというニュースです。
アメリカの場合、 電波による放送と並んで、ケーブルテレビが広く普及していて、こちらも従来型のテレビ試聴といえます。これらを合わせて「Linear TV(リニアテレビ)」と呼ぶそうです。
リニアというのは「直線的」という意味。テレビ番組の放送・配信と同時に、多くの人々が一斉に同じ番組を見る。そういう試聴形態を指しています。
一方、YouTubeなどのネット動画は「オンデマンド」です。それぞれの視聴者の興味や状況に応じて、自分が都合がいいときに好きな番組を見る形態。その内実は多種多様、バラバラです。
インターネットの普及により、テレビの世界で「リニアからオンデマンドへ」という大きな変化が起きています。それは、みなさん、日々の生活の中で実感していることでしょう。
「放送+CATV」の視聴時間が半分以下に
今回の日経の記事が伝えているのは、そのようなテレビ視聴の変化が具体的なデータによって裏付けられたというニュースです。
具体的には、「放送」と「CATV(ケーブルテレビ)」という従来型のテレビ視聴の時間が今年7月、初めて全体の50%を切りました。
その一方で、YouTubeやNetflixなど「インターネット動画配信(ストリーミング)」が伸びています。また、ゲームなどの「その他」の時間も増えています。
それぞれの視聴時間のシェアは以下の通りです。
-
インターネット動画配信 38.7%
-
CATV 29.6%
-
放送 20%
-
その他 11.6%
この円グラフの左側(放送、CATV)が従来型のテレビ視聴、右側(インターネット動画配信、その他)が新しいスタイルのテレビ視聴です。インターネットの動画配信がどんどん伸びて、右側の面積が左側の面積よりも大きくなったというわけです。
一番伸びているインターネットの動画配信。その内訳は次の通りです。
-
YouTube 9.2%
-
Netflix 8.5%
-
Hulu 3.6%
-
Amazon 3.4%
-
Disney + 2.0%
-
Max 1.4%
-
Tubi 1.4%
-
Peacock 1.1%
-
Roku 1.1%
-
Paramount+ 1.0%
-
Pluto 0.9%
-
Other streaming 5.1%
一番多かったのがYouTubeで、9.2%。2番目がNetflixで、8.5%。この2つが非常に多い。 3番目にHulu 3.6%、そして4番目にAmazonのPrime Video 3.4%と続いています。
Nielsenのページに行くと、各視聴形態の比率の変化を示すグラフも見られます。それによると、明らかにインターネットの動画配信が増えてきていることが分かります。一方で、ケーブルテレビが徐々に減っています。
その結果、ついにアメリカの「従来型のテレビ視聴」の時間が全体の半分を切った。そういう節目を迎えたということです。
日本でも同じような現象が起きている
では、日本はどうなっているのでしょう?
実は、今回と同じように、日本におけるテレビ視聴の形態の変化を伝える記事が2年前、公開されました。