お金を払って「紙の新聞」を取り続けるのは、それが楽だから
こんにちは。あしたメディア研究会の亀松です。
僕は10年以上、紙の新聞を定期購読していなかったのですが、最近、いくつかの理由から自宅に新聞を配達してもらうようになりました。
毎日、手に取っていると、いろいろ発見があります。たとえば、新聞を定期購読している人は「それが楽だから続けている」という理由が大きいのかもしれない、ということです。
「ブランケット版」と呼ばれる一般的な新聞の大きさは、見開き2ページで、縦54.5cm、横81.2cmというサイズ。紙面の記事を読むためには、新聞の両端を右手と左手で持って、パッと左右に開かないといけません。
そして、次のページを見るために、いったん広げた両手をまた閉じて、左手から右手に紙を1枚渡し、再び両手を左右に開く。この動作を繰り返すのが「新聞を読む」という身体運動です。
久々のため、最初は面倒くさかったのですが、毎日繰り返しているとだんだん慣れてきて、無意識のうちにできるようになります。そうなると、今度は何も考えずに「両手を閉じて開いて」を反復できるようになりました。
そのとき、「次に何をすべきか」と、頭を使って考え続けている感覚はありません。右手と左手を開いて、閉じて、目を動かして、という「肉体の運動」を無意識下で続けているだけです。
この運動に慣れてきたころ、これはもしかしたら、スマホでネットニュースを読むよりも楽かもしれない、と感じたのです。
スマホの場合、記事のタイトルを見て、読むべきかどうかを考えて、必要と思えばタップし、そうでなければスクロールするか、別のサイトにいく。そういう判断を脳内で何度も繰り返す必要があります。それに比べれば、紙を手に持って、開いて閉じてを繰り返しているほうが楽なのではないか、と。
特に、スマホにあまり慣れていない高齢者は「紙のほうが楽」と感じている人が多いのではないでしょうか。実際、最近会った70代の男性は「スマホでニュースで読むのは疲れますね」と話していました。
ネットならばニュースは無料で読める。にもかかわらず、お金を払って紙の新聞を取り続けるのは、そちらのほうが楽だから。そんな理由もあるのだろうと思いました。
ただし、紙の新聞を読む行為を「楽だ」と感じるためには、それが無意識で行えるほど「習慣化」している必要があります。
その点、新聞を読むことに慣れていない若い世代にとって、大きな紙を手に持って、開いて閉じてを繰り返すのは面倒くさく、ときに苦痛を伴う行為といえるのではないでしょうか。それよりは、スマホの画面を指でサッサッとなぞるほうが、よほど楽でしょう。
つまり、紙の新聞を読む行為が楽かどうかは、世代によって大きな差がある。なので、シニア世代にとって紙の新聞を読むのが楽な行為だとしても、新聞の販売部数が年々減っていくのは避けられないだろうと思います。
ちなみに、僕自身が紙の新聞を読んでいて「いいな」と感じたメリットは、そのあいだは「インターネットから離れられること」です。
インターネットにどっぷり浸かった生活を日々送っている身には、むしろそれこそが紙の新聞の価値かもしれないと、最近は感じています。
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