AIが生んだ700万再生の衝撃 「残クレアルファード」のヒットが示す動画制作の新潮流

YouTubeで異例のヒットを記録している「残クレアルファード」動画。公開3カ月で700万回を超える再生数を誇るミュージックビデオです。この人気MV、実は動画素人の40代サラリーマンがAIツールで制作したものでした。誰でもAIを活用して高品質な動画を作れるようになった今、メディア関係者はどう考えるべきでしょうか。
亀松太郎 2025.08.14
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「残クレアルファード」をテーマにした動画が話題

「残クレアルファード」とは、トヨタの高級ミニバン「アルファード」を残価設定型クレジット(残クレ、残価設定ローン)で購入することを指すスラングです。残価設定型プランは、車両本体価格の一部をあらかじめ「残価」として据え置き、残りの金額を分割で支払う仕組みで、月々の支払い負担を軽減できます。

たとえば、600万円のアルファードを購入する際、3年後の残価が400万円と設定されていれば、残りの200万円分を3年間で支払っていくことになります。これにより、高額な高級車でも手の届きやすい月額で利用できるため、若い世代を中心に人気の購入方法となっています。

ただし、残クレには大きなリスクも潜んでいます。残価が保証されるのは車両をきれいな状態で返却した場合のみで、事故歴や走行距離のオーバー、車内でのタバコ使用による臭いなどがあれば車両価値は減損し、契約終了時に多額の追加支払いを求められるケースもあります。

この「残クレアルファード」をテーマにした動画がいくつもYouTubeに投稿され、反響を呼んでいます。

若者のリアルな心情を伝える強烈なパンチライン

なかでも、大きな注目を集めているのが「破滅チャンネル」で公開されている「残クレアルファード 曲」です。公開から約3カ月で700万回を超える再生数を記録し、朝日新聞や日経新聞などの大手メディアでも言及されるほどの広がりをみせています。

アニメーションを使ったラップミュージックビデオで、残クレでアルファードを購入した若いファミリーを描いています。

「羅偉翔(らいと)」「天煌(あぽろ)」「宝翔(だいや)」といった子どものキラキラネーム、「手取り20万でもイケる」「ドンキでドヤる」「公道ヒエラルキーの最高峰!」といったパンチの効いた歌詞が、中毒性の高いラップビートに乗せて流れます。

話題となった理由の一つは、現代の消費社会における若者のリアルな心情を、皮肉とユーモアを交えて的確に表現していることにあります。高級車への憧れと現実の収入とのギャップ、見栄と実態の乖離など、多くの人が共感できる要素が巧みに織り込まれています。

動画素人の40代男性が「すべてAIで制作した」

しかし、私が動画の内容以上に注目したのは、その制作過程です。制作したのは動画の素人。AIツールのフル活用によって、この人気動画が作られていたのです。

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  • 技術的な完璧さよりも「継続的発信」と「試行錯誤」
  • ジャーナリスティックな感性がヒットを生んだ?
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