広告が 仁王立ちする 数秒間 待ちて読むべき 記事はありや

記事を読もうとするたびに画面をふさぐ広告。思わず「読むのをやめた」経験はないでしょうか? 「通せんぼ広告」と呼ばれるこの手法をめぐって、ニュース系編集者のタロウと文化系ライターのスミレが率直に語り合いました。ネットメディアの収益問題からAIへのシフトまで、現場のリアルな声をお届けします。
亀松太郎 2026.06.21
誰でも

広告が「通せんぼ」する瞬間

タロウ 最近、記事を読もうとすると画面の真ん中にバーンと広告が出てきて、「何秒か見たら読めます」みたいなやつが本当に増えてるね。あれが出た瞬間に嫌な気分になって、結局読むのをやめてしまうことが多い。むしろ「そもそもこれ読む価値あるの?」って我に返って、「ないな」と判断して引き返す(笑)

スミレ 私は意外とそういう経験があまりないんだよね。そもそもニュース系の記事をあんまり読まないからかな。たまに出てくるとすると、何かを検索したときにゴシップ系の記事に混じって現れる感じで。スマホだと「閉じるボタン」がどこにあるのかわからなくて、探している間に誤タップして別のサイトが開いちゃって、「もういい!」ってなる。

タロウ クローズボタンが超小さかったり、押したと思ったら広告サイトに飛ばされたり、半分詐欺みたいなデザインになってるのもあるよね。

スミレ そういうのが出てきたら、もうそのメディアには関わらないと決めてる。訪問販売と同じで、関わるとどんどん引き込まれるから。見ないのが一番の対処法。実際そうしてたら、私のところにはほとんど来なくなった。

タロウ 確かに、一度「見た」とアルゴリズムが判定すると、また呼び寄せてしまうからね。見ないのが正解っていう、なんとも悲しい状況だけど。

なぜメディアはここまで追い詰められたのか

タロウ でも、メディア側の事情を考えると一概には責められない。通せんぼ広告って「何万人が確実に視認した」と広告主に証明できる強みがある。通常のバナー広告はもう読者に完全にスルーされてて、広告主から「読者が本当に見てる?」と問われたときに答えられない状況になってきてるから。

スミレ 「5秒間確実に見ました」と言えるから広告主を引き留められる、ということか。

タロウ そう。駅前でチラシ配りの人が道を塞いで「受け取らなければ遠回りしてください」と迫ってるような感じ。強引だけど一定の効果はある。だから増えてる。でも……長期的には自分たちの首を絞めてると思う。

スミレ マッチ売りの少女みたいな話だよね。マッチをすれば一瞬は暖かいけど、消えたらまた寒い。もっと根本的な解決策──暖かい場所に移動する──ができてない、みたいな。

タロウ うまい例えだ(笑) 一時しのぎにはなってるけど、読者の信頼をじわじわ失っていく。そのメディアへの印象が「なんか広告だらけで信頼できない」に変わっていく。

第三の道はあるか──収益モデルの模索

スミレ でも、じゃあどうやって収益を上げればいいの? っていう話になるよね。有料会員制も「面倒くさい」って思う人が多いし。

タロウ メディアのマネタイズって、基本的には「広告収入か有料課金か」の二択しかないんだけど、それ以外の第三の道を模索してるところも出てきてるね。アメリカだとイベント収益を柱にしている新興メディアがあるし、国内では「ハルメク」っていうシニア向け女性誌が、会員制コミュニティを軸にイベント・有料コンテンツ・物販を組み合わせた多角収益モデルで成功してる。

スミレ ファンとの直接関係を作るってことだね。それができているメディアは「通せんぼ広告」なんてやらなくていい。やったら逆効果だから。

タロウ 「読者との信頼関係」を収益の基盤に据えているメディアにとって、「通せんぼ広告」は避けるべき手法なんだよね。今後は、そこが分岐点になってくると思う。

AIへのシフトが加速する

タロウ もう一つ大きな変化として、「だったらAIに聞けばいい」という動きが出てきてる。広告だらけのメディアサイトにアクセスするよりも、生成AIにさっと聞く方が快適だという人が確実に増えていて。残念ながら、大半の情報はもうAIの方が手軽に入手できる時代になってしまってる。

スミレ 「誰が書いたか」を気にする習慣がある人は、まだメディアサイトを見るかもしれないけど、そうじゃない読者は「もうAIでいい」となってしまうよね。メディアにとってはかなり厳しい状況では。

タロウ だからこそ、「ここじゃないと読めない」「この書き手じゃないと意味がない」という独自価値を持てるメディアだけが生き残っていく時代が来ていると思う。「通せんぼ広告」は、その逆を向いてる。読者を遠ざけながら短期収益を確保しようとする方向に動いてる。そのジレンマをメディア業界全体で真剣に考えないといけない時期に来ているんじゃないかな。

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